抗GAD抗体
抗GAD抗体
検査の目的
抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体(抗GAD抗体)は、膵β細胞などに存在する酵素グルタミン酸デカルボキシラーゼに対する自己抗体である。
抗GAD抗体は,インスリン依存性糖尿病(IDDM)に高頻度に検出される。
GADは1990年Baekkeskovらによって抗膵β細胞64KD蛋白抗体の抗原であることが報告された。
基準範囲
5.0未満U/mL
高値を示す疾患
● 自己免疫性1型糖尿病、
● 緩徐進行1型糖尿病(Slowly Progressive Insulin-dependent (Type 1) Diabetes
Mellitus; IDDM)、
● stiff-man症候群(体幹および四肢の変動する硬直、有痛 性の筋攣縮、課題特異的な
恐怖症、過剰な驚愕反応、および腰椎の固定された過前弯などの強 直性の変形から構成
されるまれな神経疾患)
● 多腺性自己免疫症候群(autoimmune polyglandular syndromeとは、自己免疫性の
病態により複数の内分泌器官が障害される一群の疾患の総称。本症候群は、I型、II型、
III型の3つの型に臨床分類されている。ASP I型は,小児期に発症し、粘膜皮膚カンジダ
症、副甲状腺機能低下症、副腎不全(アジソン病)を3徴とする)
● 自己免疫性1型糖尿病患者の第一度近親者
次に必要な検査
1型糖尿病では他の膵島関連自己抗体やHLAのタイピング
1型糖尿病患者の近親者やslowly progressive IDDMでは内因性インスリン分泌能の検査
臨床的解釈
抗GAD抗体は,インスリン依存性糖尿病(IDDM)に高頻度に検出される膵β細胞に対する抗体であり、抗体値陽性の場合、1型糖尿病になると判断される。 抗GAD抗体は自己抗体の一つで、 インスリンを作る膵ランゲルハンス氏島β細胞を攻撃、破壊して起こると考えられている。
膵β細胞破壊に起因するインスリン不足により発症するIDDMにおいては,抗GAD抗体が高頻度に検出され、IDDM発症の診断的マーカーとして抗GAD抗体の測定は有用である。
抗GAD抗体を測定することで、 早期の1型糖尿病の診断、発症予測、インスリン分泌能力の低下予測ができる。
抗GAD抗体の陽性率は1型糖尿病で70~80%、2型糖尿病で約5%であり、また、抗GAD抗体陽性の糖尿病では緩徐に進行する1型糖尿病が多く見られることから、抗GAD抗体は1型糖尿病の判定補助や発症予知に有用とされる。
1型糖尿病の原因は主に自己免疫の関与による膵β細胞の破壊とされるが、抗GAD抗体の関与については不明である。
2型糖尿病に潜む、 隠れた1型糖尿病をでは、GAD抗体の測定が有用である。
測定のタイミング
・糖尿病と診断した時
・血糖コントロールが急激に悪化した時 •Cペプチドが進行性に低下している時
・他の自己免疫疾患(甲状腺疾患など)を合併した時
・薬物療法(特にSU薬)の開始時や二次無効が疑われる時 など
可能性のある変動要因
2型糖尿病と考えて治療している患者でも、一度は抗GAD抗体を測定する意義がある。予想外に陽性であった場合、slowly progressive IDDMを念頭におく。
抗体価が10U/ml以下の場合はインスリン治療が必要にならないことも多く、“1型疑い”として経過観察することが勧められている。
抗GAD抗体価が著明高値の場合や、インスリン分泌が枯渇していながら抗体価が下がらない場合には、自己免疫性甲状腺疾患など膵以外の他臓器の自己免疫疾患の合併を調べる必要がある。
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